仕出し料理と申しますのは、非常に特殊な分野でして他と最も違う点は『冷めたお料理』である事。
温かいものは温かい方が美味しい、冷たい物は冷たい状態が美味しいに決まってます。
しかし仕出し料理の場合 全てのお料理を温かい状態 冷たい状態でお届けする事は不可能に近い、温かい物は敢えて冷ましてから盛り付けます これは腐りにくくする為に行ないます。
温かい物が冷めた状態になると、美味しくない。
他の分野のお料理は温かい状態で完成、仕出し料理はそれを冷ました状態で完成。
私共のお料理が美味しいのは、冷ました状態を想定して調理する事が前提にあります。
素材選びや調理法にも違いがあります。
例えば焼き魚において、温かい時はすごく美味しい物が冷めた状態では硬くなってダメな物が多くあります。
また生麩などは普通に煮含めると6時間ほどでもちもちとした食感が台無しになってしまいます。
そして 近年、冷凍加工食品の発達で様々な物が『仕出し屋向け』に製造されております。
まさかこんな物までと思うような物、例えばにぎり寿司や手まり寿司、解凍して盛り付けるだけ!!
他にもきれいな錦糸巻きなどの巻物やかなり手の込んだ物が巷にあふれています。本当に良くできた物がたくさんあります。
しかし 私共ではこのような物を一切使用いたしません。
何品か使用することでお料理がはなやかになって楽しい事は確かにあります。しかし敢えて使用致しません。
これは絶対に守る 誰がなんと言おうと守り抜く信念です。
『あっぱれのお料理』は世界中であっぱれでのみ販売している物です、全く同じ物がどこのお店にもある・・・これは絶対にあり得ません。
もう一つの理由は、このような加工食品は必要以上に添加物を使用している場合が多いです。
当然 大量生産され、流通にのせる為、最低3ヶ月以上の消費期限が必要になります。
すぐに傷んでしまう様では商品になりません。
保存料などの添加物は身体に蓄積されると健康を害する事は良く知られている事です。
それ以上に私共では『後味が悪い』・『胸やけがする』この2点が使用しない理由です。
厚生労働省統計によると全国で毎年5万人前後の調理師資格の交付が行なわれています。
全国に調理師は何十万人、何百万人いる中で、残念な事に仕出し料理人と言える調理師はどれだけいるでしょう。
私は仕出し料理人として後輩を育て、共に大坂の食文化である『仕出し料理』を考えていきたいと考えます。